売上代金が掛けですぐもらえなかったり、
受取手形(電債)により数か月先にならないと入金されなかったりすると、
売上は計上されて利益は出ているのにお金はナイ状態になります。
逆のことも言え、仕入れ代金をすぐに支払わず、ツケにしてもらったり、
あるいは支払手形(電子記録債務)を振り出して支払いを先延ばしにすると、
仕入と言う経費は発生してその分利益は減少するのに、お金は減っていません。
2点目に借入金の返済の存在です。
借入金は貸借対照表の「負債の部」における
代表的な勘定科目の1つですが、
借入れをしたときに売上にはならないように、
返済した時も経費ではありません。
あくまでも、借入によって(お金と共に)負債が増え、
返済によって(お金と共に)負債が減少する、ということなのです。
よって、仮に現金商売だとして、
つまり、売上も仕入・経費もカケ取引のない現金取引だったとして、
その場合に1か月の利益が100発生したとしも、
借入返済を80すれば、お金は20しか残りません。
しかし、損益計算上の利益は100のままです。
逆に言えば、売上がゼロの月であったとしても、
その月に銀行から100の借入をすれば、
利益は一切計上されていないのに
お金は100増えます。
3点目は、個人事業主の場合の話ですが、
「事業主貸」という存在です。
事業主貸の代表例は「生活費」です。
生活費は経費にはなりませんから、
損益計算書には出てきません。
(貸借対照表の資産の部に登場します)
よって、利益が100しか出ていないのに、
生活費を80出すとお金は20しか残りません。
4点目は、法人契約の生命保険の資産計上額です。
全額損金タイプの保険であれば
経費の額と出ていくお金の額は一致しますが、
解約返戻金があるタイプの定期保険などにおいては、
全額が経費に落ちず、
「6割資産計上、4割損金」という具合で、
経費に落ちる額と実際にお金が出ていく額とが一致しません。
つまり、お金としては100出ていったのに、
経費としては40しか計上されない、ということです。
5点目としては、固定資産の取得が挙げられます
仮に500万円の営業車をキャッシュで購入した場合、
出ていくお金は500なのに
減価償却費として経費計上される金額は
耐用年数のうちの1年分です。
耐用年数が経過しないと償却(経費化)できません。
(なお、土地は償却できないので、1円の経費にもなりません)
これら5点以上にも、前渡金・貸付金・立替金・仮払金・保証金などのように、
お金は出て行っても、損益計算上の経費とならないものが
実務上の取引においては多々あります。
いかがでしょうか?
「利益は出ているのに、なんでお金は残っていないの?」
という悩み・疑問をお持ちの方は、
こういう視点からも決算書や試算表を
見直してみてくださいね。
【最後に言わせてチョーダイ】「キャッシュフロー計算書」が重視されるのは、
このような<利益とお金の動きの不一致>の原因を
探るためでもあります。
しかし、キャッシュフロー計算書が分からなくても、
ご紹介したようなポイントを知っておくだけでも、
利益は出ているのになんでお金が無いの???
ってモヤモヤは大幅に軽減されますよ。