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連続税務小説 ヤマゲン
2026/01/21
連続税務小説 ヤマゲン 第21話「ヤマゲンが“節税”という言葉を嫌がる理由」  

 イチゴポッキーの箱は、
 机の端に置かれたままだった。

 ヤマゲンは、
 ネクタイのイチゴ柄を整えながら、
 資料に目を落としている。

「……ヤマゲンさん」

 田中 恒一が、
 少し言いづらそうに切り出した。

「率直に聞いても、
 ええですか」

「どうぞ」

節税って、
 何かできることあります?

 その瞬間だった。

 ヤマゲンの手が、
 ほんの一瞬、止まった。

 ポッキーには触れない。
 ネクタイもいじらない。

 視線だけを、
 田中に向けた。

「……田中さん」

 声は穏やかだが、
 空気が変わる。

「その言葉な」

 ゆっくり言う。

税理士が一番、
 誤解されやすい言葉

 ですわ」

 田中は、
 背筋を伸ばした。

「節税いうと」

 ヤマゲンは続ける。

「税金を
 減らすテクニック、
 思われがちですけど」

 資料の一行を、
 指で叩く。

「実務ではな」

利益を
 どう“壊さずに残すか”

 の話です」

「壊さずに……」

「ええ」

 ヤマゲンは、
 数字を追いながら話す。

「たとえば」

「利益を減らすために
 無理に経費使う」

「これは
 税金は減ります」

 少し間を置く。

「でも」

現金も減ります

 田中は、
 黙ってうなずいた。

「税務署な」

 ヤマゲンは、
 淡々と言った。

「経費の金額より
 “理由”
 見てます」

「節税目的だけの支出、
 説明つかへんかったら」

「普通に
 否認されます」

 否認。

 その言葉が、
 ずしっと来る。

「それに」

 ヤマゲンは、
 決算書を閉じた。

「銀行は
 もっとシビアです」

「節税で
 利益削ってる会社」

融資、
 一番嫌われます

 田中は、
 思わず聞き返した。

「税金、
 少ない方が
 ええんちゃいます?」

「ちゃいます」

 即答だった。

「銀行が見たいのは」

税金を払ったあとに
 何が残ってるか

 です」

 ヤマゲンは、
 ここで初めて
 イチゴポッキーを一本取った。

 だが、
 口には入れず、
 机に置く。

「節税いう言葉な」

 静かに言う。

“先に言うたらあかん言葉”
 です」

「先に?」

「順番があるんです」

 指を三本立てる。

「まず
 利益を出す」

「次に
 現金を残す」

「最後に
 税金をコントロールする」

「この順番、
 ひっくり返したら」

 ヤマゲンは、
 はっきり言った。

だいたい、
 事故ります

 田中は、
 苦笑した。

 思い当たる節が、
 多すぎた。

「せやから」

 ヤマゲンは、
 ネクタイのイチゴを
 軽くつまむ。

「僕が言う
 節税はな」

“減らす”やなくて
 “耐える”ための設計

 です」

 耐える。

「税金は」

 一拍置かず、
 言い切る。

必ず来ます

「せやから」

「来る前提で
 壊れへん形に
 しておく」

「それが
 顧問税理士の仕事です」

 田中は、
 大きく息を吐いた。

 節税。

 今まで、
 便利な言葉だと思っていた。

 でも実際は、
 扱いを間違えたら
 一番危ない言葉だった。

「ヤマゲンさん」

 田中が言う。

「……今日、
 節税の話、
 聞いてよかったです」

「え?」

「やらなあかんこと、
 先に分かりました」

 ヤマゲンは、
 少しだけ笑った。

「それでええんです」

 そして、
 ようやくポッキーをかじる。

節税は、
 一番最後の話

 ですから」


連続税務小説 ヤマゲン
2026/01/20
連続税務小説 ヤマゲン 第20話「イチゴの違和感」  

契約を交わしてから、
 初めての打ち合わせだった。

 事務所のドアを開けた瞬間、
 田中 恒一は、
 ほんの一瞬、違和感を覚えた。

 机の上に、
 赤い箱が置いてある。

 やけに、目立つ。

 ――イチゴポッキー。

「……それ」

 思わず、口から出た。

「気になります?」

 ヤマゲンは、
 悪びれもせず、箱を手に取った。

「イチゴポッキーですわ」

 田中は、
 一瞬、言葉に詰まった。

 税理士事務所。
 顧問契約後、初回の打ち合わせ。
 机の上の、イチゴ。

 そして、
 もう一つ。

 視線を上げた瞬間、
 田中は気づいた。

 ――ネクタイ。

 よく見ないと分からない。
 でも確かに、
 小さなイチゴ柄。

「……あの」

 田中は、
 少し言いづらそうに言った。

「ネクタイも、
 イチゴですよね?」

 ヤマゲンは、
 一瞬だけ間を置いてから、
 にやっと笑った。

「よう気づきましたね」

 ネクタイを、
 指で軽くつまむ。

「これな、
 わざとです

「……わざと?」

「はい」

 即答だった。

「税理士事務所ってな」

 ヤマゲンは、
 椅子に腰かけながら言う。

「入った瞬間、
 肩に力入りすぎるんです」

「せやから」

 イチゴポッキーの箱と、
 ネクタイを、
 交互に指す。

最初に一個、
 違和感置いとく

 田中は、
 思わず笑いそうになるのを、
 こらえた。

「お客さん側からしたら」

 ヤマゲンは続ける。

「『イチゴ好きなん?』
 『センスないん?』
 どっちか思うでしょ」

「……正直、
 思いました」

「でしょ」

 満足そうにうなずく。

「その瞬間な」

 声のトーンが、
 少し落ちる。

税理士=怖い
 が、一段落ちるんです」

 ヤマゲンは、
 イチゴポッキーを一本取り、
 田中の前に差し出した。

「どうぞ」

「……いただきます」

 甘い。

 思っていたより、
 ずっと甘い。

 そして、
 肩の力が抜けた。

「ここからな」

 ヤマゲンは、
 ポッキーを机に置いた。

 空気が、
 はっきり変わる。

「契約した以上」

 資料を開く。

本音で行きます

「遠慮、
 いりません」

「数字、
 全部出してもらいます」

 売上。
 原価。
 人件費。

「“だいたい”は、
 禁止です」

 田中は、
 小さく息をのんだ。

 でも、
 嫌な感じはしなかった。

「安心してください」

 ヤマゲンは、
 ネクタイのイチゴを
 軽く叩く。

緩めるところは緩める。
 締めるところは締める

「その切り替えのための
 イチゴですわ」

 田中は、
 赤い箱とネクタイを見た。

 さっきまで感じていた
 違和感。

 それが、
 安心感に変わっている。

「ヤマゲンさん」

 そう呼ぶと、
 ヤマゲンは満足そうにうなずいた。

「ええですね」

「ほな、改めて」

 資料を閉じる。

顧問税理士・
 大和源太郎として、
 本気で行きます

 田中は、
 もう一度、
 イチゴポッキーをかじった。

 甘い。

 でも、
 この先の話は、
 きっと甘くない。

 それが、
 なぜかはっきり分かった。


連続税務小説 ヤマゲン
2026/01/19
連続税務小説 ヤマゲン 第19話「契約書は、縛るためやなくて」  

 先生の事務所で、

 田中 恒一は、少しだけ背筋を伸ばしていた。

 机の上には、
 白い紙が一枚。

 よく見れば、
 それは契約書だった。

「……これが、
 顧問契約書ですか」

 田中がそう言うと、
 先生は、軽くうなずいた。

「そうですわ」

 紙を指でトントンと叩く。

「別に、
 怖いもんちゃいます」

「……正直、
 契約書って聞くと、
 ちょっと身構えます」

 先生は、すぐに笑った。

「分かります分かります」

「大阪人な、
 “縛られる”って言葉、
 生理的に嫌いですから

 田中も、
 思わず苦笑した。

「せやからな」

 先生は、少し身を乗り出す。

「これは、
 縛るための紙やないです」

「ほな、
 何のためですか」

逃げんため
 ですわ」

 即答だった。

「僕も、
 田中さんも」

 少し間を置いて続ける。

「ええ加減な関係に
 ならんための紙です」

 田中は、
 その言葉を
 静かに受け止めた。

 ここまでの相談は、
 確かに、どこか様子見だった。

「料金も、
 ここに書いてますけど」

 先生は、あえて淡々と言った。

「正直な話な」

一番大事なんは、
 金額やない

 田中は、
 少し意外そうに顔を上げた。

「これから先は」

 先生は、
 声のトーンを落とす。

「田中さんが
 迷ったときに」

僕が
 “それは違う”って
 言う立場になる

 いうことです」

 田中の胸が、
 少しだけ締まった。

「優しいことばっかり
 言う税理士、
 ちゃいますよ」

「嫌われ役も、
 ちゃんとやります」

 田中は、
 小さく息を吐いた。

「……それ、
 もう分かってます」

「でしょ」

 先生は、
 軽く笑った。

 そして、
 契約書の最後のページを
 田中の前に差し出す。

「ここに、
 田中さんの名前」

 指をずらす。

「で、
 ここに、
 僕の名前が入ります」

 田中は、
 ペンを持ったまま、
 ふと止まった。

「……そういえば」

「先生のお名刺、
 頂いてませんでした」

 その瞬間、
 先生は少しだけ
 間を置いた。

「ああ、
 確かに」

 軽く咳払いをしてから、
 さっと差し出した。

「改めまして
 大和 源太郎(やまと げんたろう)
 です」

「……大和、
 源太郎」

「ちょっと硬いでしょ」

 大和源太郎は、
 少し照れたように笑う。

「顧問先の社長さんからは

ヤマゲン
 って呼ばれてますねん」

 ヤマゲン。

 田中は、
 その名前を
 頭の中で転がしてみた。

 妙に、しっくり来た。

「ヤマゲン先生、
 ですね」

「先生、
 要らんです」

 源太郎は、即座に言った。

「仕事の話は
 税理士・大和源太郎」

「それ以外は
 ヤマゲン」

「そのくらいが
 ちょうどええですわ」

 田中は、
 ゆっくりと
 自分の名前を書いた。

 そして、
 源太郎の署名を見る。

 そこには、
 崩れすぎていない、
 でも迷いのない字で
 「大和 源太郎」と書かれていた。

「……名前、
 書くと」

 田中が言う。

「急に、
 現実味出ますね」

「出ます」

 源太郎は、
 はっきりとうなずいた。

「せやから、
 ここで書くんです」

覚悟、
 共有するために

 契約書を閉じ、
 源太郎は立ち上がった。

「ほな、田中さん」

「ここからは」

 一呼吸おいて、
 こう言った。

遠慮なしで行きましょ

 田中は、
 静かにうなずいた。

 先生でも、
 税理士でもない。

 大和源太郎――ヤマゲン

 この人となら、
 厳しい話も、
 ちゃんと受け止められる。

 田中は、
 そう思っていた。


連続税務小説 ヤマゲン
2026/01/18
連続税務小説 ヤマゲン 第18話「一人で書く、という選択」  

机の上に、二つの紙が並んでいた。

 一つは、税務署からの「お尋ね」。
 もう一つは、白紙のメモ用紙。

 田中 恒一は、しばらく、その二つを見比べていた。

 一人で書く。
 それも、できなくはない。

 材料費が増えた理由。
 外注費の内容。
 家事按分の考え方。

 先生と話したことを思い出せば、
 文章にはできそうだ。

「……自分で、やるか」

 そう呟いて、
 ペンを取った。

 まずは、材料費。

 〈前年より受注量が増加したため〉

 書いてみる。
 間違ってはいない。

 次に、外注費。

 〈一時的に作業量が増えたため〉

 これも、嘘ではない。

 家事按分。

 〈工場兼自宅のため、合理的に按分〉

 ――合理的。

 便利な言葉だ。
 でも、その中身は、
 どこか薄い。

「……これで、ええんか?」

 田中は、
 ペンを止めた。

 書けてはいる。
 でも、
 守られている感じがしない。

 もし、この文書で、
 税務署から追加の質問が来たら。

 もし、
 「具体的には?」
 と聞かれたら。

 そのたびに、
 自分一人で、
 判断しなければならない。

 正解かどうか、
 分からないまま。

 田中は、
 ふと、先生の言葉を思い出した。

「ここから先は、判断に責任が乗ります」

 責任。

 それは、
 怒られるかどうか、
 という話だけじゃない。

 この判断が、
 数年後の自分を、
 苦しめないかどうか。

 そこまで、
 背負えるかどうか。

 田中は、
 スマートフォンを手に取った。

 先生の番号を開いて、
 少しだけ、迷う。

 無料で教えてもらえる、
 そんな段階は、
 もう終わった。

 それは、
 今日の田中にも、
 はっきり分かっていた。

 それでも。

 田中は、電話をかけた。

「先生……
 あの、やっぱり、
 一人で書くのは、不安で」

 電話の向こうで、
 先生は、すぐには答えなかった。

 少しの沈黙。

 そして、
 落ち着いた声。

「正直に言いますね」

 田中は、息を飲んだ。

その感覚、
 めちゃくちゃ大事ですわ

 否定じゃなかった。

「一人で書くいう選択も、
 全然アリです」

「でもな」

 一拍。

不安なまま出すのが、
 一番あかん

 田中は、
 無言でうなずいた。

「お金払ういうんはな」

 先生は、続けた。

「作業代やないです」

「……」

判断を一人で背負わんでええ、
 いう状態を買う

 いうことです」

 田中の胸の奥で、
 何かが、
 すとんと落ちた。

 申告書を作る。
 文章を書く。

 それだけなら、
 自分でもできる。

 でも。

 この判断でいいのか。
 もっといい書き方があるんじゃないか。
 あとから問題にならないか。

 その不安を、
 一人で抱えなくていい。

「田中さん」

 先生は、
 ゆっくり言った。

「ここから先、
 一緒にやるなら」

僕は、
 “答え方”まで考えます

 田中は、
 深く、息を吐いた。

「……お願いします」

 言葉は、
 自然に出た。

 決断した、というより、
 納得した、
 そんな感じだった。

 電話を切ったあと、
 田中は、
 机の上の白紙を、
 そっと裏返した。

 一人で書く、という選択。
 それは、
 「できるかどうか」ではない。

 「背負うかどうか」
 の選択なのだと、
 田中は、はっきり理解した。


連続税務小説 ヤマゲン
2026/01/17
連続税務小説 ヤマゲン 第17話「その封筒は、質問ではなかった」  

 その封筒は、前よりも薄かった。

 色も、文字も、見慣れている。
 差出人は、また――税務署。

「……今度は何や」

 田中 恒一は、机の上に封筒を置いたまま、
 すぐには開けなかった。

 嫌な予感、というほどではない。
 でも、軽くもない。

 ようやく開けると、
 中には一枚の紙。

 「お尋ね」

 調査、ではない。
 呼び出し、でもない。

 ただ、
 いくつかの質問が並んでいる。

 ・材料費が前年より増加している理由
 ・外注費の内容と支払先
 ・家事按分の考え方

「……来たな」

 心臓が、
 一段、強く打った。

 これまでやってきたことが、
 頭の中を駆け巡る。

 理由はある。
 説明も、たぶんできる。

 でも。

 これを、自分の判断で返してええんか?

 田中は、
 先生に電話をかけた。

「先生、
 税務署から“お尋ね”来ました」

 電話の向こうで、
 先生は、すぐに答えた。

「ええ。
 よくあるやつですわ」

 少し安心しかけた、その瞬間。

「せやけどな」

 一拍。

ここから先は、
 立場、変わります

 田中は、言葉を失った。

「……どういう意味ですか?」

 先生の声は、
 いつもより、少し低かった。

「今まではな」

 ゆっくり、言葉を選ぶ。

「考え方を整理したり、
 一般論を話したり、
 “自分で判断するための材料”を
 渡してただけです」

 それは、確かにそうだ。

「でも、この紙な」

 先生は続ける。

税務署に出す文書ですわ」

 田中は、
 手元の紙を見つめた。

「ここに何を書くかで、
 結果が変わる可能性があります」

 胸の奥が、
 きゅっと締まる。

「どこまで説明するか
 どういう言葉を使うか
 それはな」

 先生は、はっきり言った。

責任が乗る判断です」

 沈黙。

 電話口で、
 田中の呼吸音だけが聞こえる。

「田中さん」

 先生は、
 少しだけ声を和らげた。

「ここまでは、
 無料でええと思ってました」

 はっきりと、
 そう言った。

 田中は、
 思わず姿勢を正した。

「でもな」

「これから先は、
 僕の名前と判断が乗ります

 名前。

 その言葉が、
 重く響いた。

「タダでやる、
 いう話やないです」

 先生は、淡々と言った。

「逆に言うたらな」

 一拍。

ここから先は、
 ちゃんと僕の仕事として、
 一緒にやれます

 田中は、
 何も言えなかった。

 “断られた”感じは、しない。
 でも、
 “線を引かれた”のは、分かる。

「急に決めんでええです」

 先生は続けた。

「自分で書いて出す、
 いう選択もあります」

 少し間を置いて、
 こう付け加えた。

「せやけどな」

一緒にやるなら、
 立場、はっきりさせましょ

 電話を切ったあと、
 田中は、しばらく動けなかった。

 今まで、
 先生は“助言者”だった。

 でも今、
 その先に、
 もう一段、深い場所があると知った。

 責任。
 判断。
 立場。

 それは、
 お金の話でもある。

 でも、それ以上に。

 誰と、この事業を進めるのか
 という話だった。

 田中は、
 お尋ねの紙を、
 もう一度読み返した。

 質問は、
 さっきより、
 少し違って見えた。

 これは、
 試されている。

 数字じゃない。
 向き合い方を。

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