決算書は、きれいにまとまっていた。
売上。
経費。
利益。
どの数字も、
会計ソフトの中では、
きちんと整列している。
「……ちゃんと合ってるよな」
田中 恒一は、
何度目か分からない確認をした。
ズレはない。
計算ミスもない。
それでも、
胸の奥に、
小さな不安が残る。
数字は合っている。
でも、
説明できるかと聞かれると、
自信がない。
先生との打ち合わせ。
田中は、決算書を差し出した。
「数字自体は、
大丈夫そうですよね?」
先生は、しばらく黙って資料を見ていたが、
やがて顔を上げた。
「ええ。
数字は、きれいですわ」
その言葉に、
田中は、少し安心しかけた。
「せやけどな」
一拍。
「税務署が見るんは、
数字そのものちゃいます」
田中は、思わず眉をひそめた。
「……え?」
先生は、ペンを取り、
決算書の一部を指した。
「この材料費、
去年より増えてますよね」
「はい。
仕事量が増えたんで」
「それ、
口で説明できます?」
田中は、言葉に詰まった。
増えた理由は、分かっている。
でも、
それを順序立てて、
第三者に説明することは、
考えたことがなかった。
「税務署な」
先生は、淡々と言った。
「合ってるかどうかより、
納得できるかどうか
見てきます」
納得。
「急に増えた数字があったら、
『なんで?』
って思うの、
人として普通ですわ」
田中は、
自分が税務署側の立場だったら、
と想像してみた。
確かに、
理由の分からない数字は、
気になる。
「帳簿ってな」
先生は、少し声を落とした。
「記録である前に、
説明書です」
「説明書……」
「はい。
この会社は、
どうやって稼いで、
どうやって使ってるか」
田中は、
決算書を見つめ直した。
そこには、
数字しか書いていない。
理由も、背景も、
載っていない。
「せやからな」
先生は、続けた。
「メモが、
めちゃくちゃ大事になります」
「メモ、ですか」
「ええ。
『大型案件が増えた』とか、
『材料価格が上がった』とか」
ほんの一言でいい。
でも、それがあるだけで、
数字は、急に意味を持つ。
「数字はな」
先生は、ゆっくり言った。
「嘘はつかへんけど、
何も語らへん」
田中は、
その言葉を、
静かに噛みしめた。
合っている。
それだけでは、足りない。
説明できる。
それが、次の段階だ。
打ち合わせの帰り道、
田中は、ノートを開いた。
材料費が増えた理由。
外注費が一時的に増えた背景。
設備修理の経緯。
今なら、思い出せる。
でも、
数年後はどうだろう。
書いておかないと、
自分自身が説明できなくなる。
その夜、
田中は、帳簿の横に、
小さなメモ欄を作った。
数字の横に、
言葉を添える。
たったそれだけで、
帳簿が、
急に“生き物”のように感じられた。
数字は合っている。
でも、それだけじゃない。
納得できるかどうか。
それが、
次に越える壁だと、
田中ははっきり理解した。
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