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連続税務小説 ヤマゲン 第27話「“税務調査が来る会社”の特徴」

2026/01/27
連続税務小説 ヤマゲン 第27話「“税務調査が来る会社”の特徴」

ヤマゲンは、
 珍しくポッキーに手を伸ばさなかった。

 ネクタイのイチゴ柄だけが、
 やけに目に入る。

「田中さん」

 少し低い声で言う。

「税務調査ってな」

「完全にランダム
 ちゃいます」

 田中は、
 その一言で察した。

「……何か、
 特徴があるんですか」

「あります」

 即答だった。

「しかもな」

 ヤマゲンは、
 あっさり言う。

「だいたい、
 重なります
」


① 売上が“きれいに”動きすぎている

「一つ目」

 ヤマゲンは、
 売上推移のグラフを指した。

「毎年」

「ほぼ同じ売上
 ほぼ同じ利益」

「これな」

 少し笑う。

「経営的には
 優秀

 です」

 田中は、
 一瞬、安心しかけた。

「でも」

 すぐ続く。

「税務的には」

 トーンが変わる。

「“作ってる可能性”
 を疑われます」

 田中の眉が、
 ぴくりと動いた。

「特に」

「決算月だけ
 利益が調整されてる」

「消費税の境目で
 止まってる」

「こういう数字」

 はっきり言う。

「見られます」


② 現金の動きが説明できない

「二つ目」

 今度は、
 通帳のコピー。

「現金」

 ヤマゲンは、
 短く言った。

「売上は
 入ってない」

「でも」

「生活できてる」

 田中は、
 黙り込んだ。

「税務署な」

「ここ、
 一番嫌います」

「説明できへん現金は」

 間を置かず言う。

「全部、
 売上候補

 です」


③ 経費が“多い”より“偏っている”

「三つ目」

 領収書の束を、
 軽く叩く。

「経費多い会社、
 山ほどあります」

「でもな」

「同じ科目に
 異常に偏ってる
」

「これ、
 引っかかります」

 交際費。
 旅費交通費。
 外注費。

「毎年、
 同じ時期」

「同じ金額帯」

「同じ店」

「これな」

 ヤマゲンは、
 静かに言う。

「“考えて入れてる”
 痕跡

 です」


④ 税理士が頻繁に変わっている

 田中は、
 ここで思わず聞いた。

「……それも
 関係あるんですか」

「あります」

 きっぱり。

「税理士変わる理由、
 色々あります」

「でも」

「短期間で
 コロコロ変わる
」

「これは」

 少し言葉を選ぶ。

「“何かある会社”
 扱いされます」

 田中は、
 背筋が伸びた。


⑤ 社長が“数字を把握していない”

「最後」

 ヤマゲンは、
 田中を見る。

「社長が
 自分の数字を
 説明できへん
」

 田中は、
 耳が痛かった。

「売上
 利益
 消費税」

「“税理士に任せてます”」

 その言葉を、
 ヤマゲンは
 はっきり否定した。

「これ、
 一番あかん
」

「税務署からしたら」

「“じゃあ、
 誰が責任持ってるん?”
 です」


ヤマゲンのまとめ

 ヤマゲンは、
 ようやくポッキーを一本取った。

 だが、
 すぐには食べない。

「田中さん」

「調査来る会社ってな」

「悪い会社
 ちゃいます」

「説明できへん会社
 です」

 その言葉は、
 重かった。

「逆に言うたら」

 少し笑う。

「数字が説明できて」

「現金の流れが見えて」

「税務の考え方、
 分かってたら」

「調査、
 怖がる必要ない
」

 田中は、
 深く息を吐いた。

 自分の会社は、
 どうだろう。

 少なくとも、
 「考える材料」は
 はっきりした。

「ヤマゲンさん」

 田中が言う。

「……これ、
 全部、
 事前に直せます?」

「直せます」

 即答だった。

 そして、
 ポッキーをかじる。

「せやから、
 顧問なんです
」

 甘い音が、
 静かに響いた。

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