ヤマゲンは、
椅子に深く腰かけたまま、
腕を組んだ。
イチゴポッキーには、
まだ手を伸ばさない。
「田中さん」
静かに言う。
「税務調査でな」
「これだけは、
言うたらあかん
って一言、
あります」
田中は、
ごくりと唾を飲んだ。
「……何ですか」
ヤマゲンは、
少しだけ笑った。
でも、
目は笑っていない。
「“みんな、
そうしてます”
です」
田中は、
一瞬、意味が分からなかった。
「みんな……?」
「ええ」
ヤマゲンは、
ゆっくり続ける。
「“他の会社もやってます”
“周りも同じです”
“前の税理士が言いました”」
「全部、
同じ意味です」
田中の顔が、
少しずつ曇る。
「それ、
あかんのですか?」
「あきません」
即答だった。
「税務調査でな」
ヤマゲンは、
指を一本立てる。
「“他人基準”は、
何の防御にも
なりません」
「税務署が見るのは」
決算書を指す。
「田中さんの会社
です」
「隣の会社でも
同業でも
親戚でもない」
田中は、
黙ってうなずいた。
「実務ではな」
ヤマゲンは、
少し踏み込む。
「“みんなやってる”
って言葉が出た瞬間」
「調査官の頭は、
こうなります」
少し間を置かず、
言い切る。
「“ほな、
どこまで広がってるか
見よか”」
田中は、
思わず息をのんだ。
「つまりな」
ヤマゲンは、
低い声で続ける。
「自分一人で
終わる話が」
「業界全体の話に
引き上げられる」
それは、
最悪の展開だ。
「他にもな」
ヤマゲンは、
指を折っていく。
「“昔からそうです”」
「“慣例です”」
「“細かいことは
気にしてません”」
「これな」
はっきり言う。
「全部、
“見直す理由”
になります」
田中は、
思わず苦笑した。
どれも、
言いそうだ。
「じゃあ」
田中が、
恐る恐る聞く。
「分からんときは、
どう言えば……」
ヤマゲンは、
少しだけ表情を緩めた。
「ええ質問です」
そして、
こう言った。
「“確認します”
です」
「確認?」
「ええ」
「調査の場でな」
「その場しのぎの
説明、
一番あかん」
「分からんことを
分かったフリしたら」
「後で、
必ず矛盾出ます」
ヤマゲンは、
静かに続けた。
「せやから」
「分からんときは」
「“顧問税理士に
確認します”」
「それで
ええんです」
田中は、
大きく息を吐いた。
「……正直、
助かります」
「でしょ」
ヤマゲンは、
ここでようやく
イチゴポッキーを一本取った。
カリッ。
「税務調査ってな」
噛みながら言う。
「頭の良さ比べ
ちゃいます」
「一貫性の勝負
です」
「最後に」
ヤマゲンは、
指を一本立てた。
「これだけ
覚えといてください」
「調査官の前では」
「説明は、
短く」
「聞かれたことだけ
答える」
「余計な親切、
いらんです」
田中は、
深くうなずいた。
今までの自分は、
良かれと思って
喋りすぎていた。
「田中さん」
ヤマゲンは、
穏やかに言った。
「税務調査はな」
「黙る勇気
も、
立派な対策です」
イチゴポッキーの箱が、
机の端に置かれている。
甘い匂い。
でも、
今日の話は、
かなり苦い。
その苦さが、
田中には
やけにリアルだった。
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