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連続税務小説 ヤマゲン 第45話 「数字の向こう側」

2026/02/14
連続税務小説 ヤマゲン 第45話 「数字の向こう側」

 税務署の建物は、

 今日も無機質だった。

 

 灰色の外壁。

 曇った窓。

 

 何度来ても、

 空気は変わらない。

 

 ヤマゲンは、

 薄いクリアファイルを

 軽く叩いた。

 

「今日は提出やない」

 

「確認や」

 

「はい」

 

 夏美は、

 小さくうなずく。

 

 修正申告書は、

 e-Taxで送信する。

 

 その前に、

 調査担当へ

 ドラフトを確認してもらう。

 

 それだけの用事だ。

 


 受付を済ませ、
 個室へ通される。

 

 ほどなくして、

 上席と
 若い事務官が入ってきた。

 

「お忙しいところ、
 ありがとうございます」

 

 声は、

 前回よりも

 わずかに柔らかい。

 

「修正申告書のドラフトを

 お持ちしました」

 

「送信前に、

 内容の確認をお願いできればと」

 

 ヤマゲンが差し出す。

 

 上席は、

 静かにページをめくる。

 

 クラブでの飲食費。

 

 海外旅行費用。

 

 否認された経費。

 

 増えた税額。

 

 上席は最後のページまで目を通し、

 ペンを置いた。

  

「……確認いたしました」

 

「調査結果どおりですね」

 

「問題ありません」

 

 一拍。

 

「追徴税額の納税は、

 いつ頃になりそうでしょうか」

 

 事務的な問い。

 

「本日、もしくは明日には、

 田中社長が納付すると申しておりました」

 

 ヤマゲンは、

 淡々と答える。

 

 上席は、うなずく。

 

「承知しました」

 

「過少申告加算税および延滞税につきましては、

 追徴税額の納付を確認次第、

 改めて納付書を発送いたします」

 

「よろしくお願いいたします」

 

 実務の話は、

 それで終わった。

 

 しかし。

 

「……先日の件ですが」

 

 上席の声が、

 わずかに低くなる。

 

「奥様への説明の場面で、

 配慮が足りなかった点は、

 否めません」

 

 謝罪でも、

 弁解でもない。

 

「先生には釈迦に説法でございますが、
 税務調査は質問検査権に基づく行為です」

 

「しかし、その結果が
 どのような副次的影響を及ぼすかまでは……」

「わたくしどもと致しましては、
 関知致しかねます」

 

 
 一拍。
 
「……ご了承下さい」

 

 部屋に、

 静かな間が落ちる。

 

 ヤマゲンは、

 ゆっくりとうなずく。

 

「数字は整いました」


「田中社長にとっても、
 良い勉強の機会に
 なったはずです」

「それで十分です」

 

 上席は、

 短くうなずいた。

 

 そこで。

 

「失礼します」

 

 小さな声。

 

 夏美だった。

 

 二人の視線が向く。

 

 夏美は、

 背筋を伸ばす。

 

「先日は、

 立ち会いさせていただき、

 ありがとうございました」

 

 言葉を選びながら。

 

「まだ未熟ですが、

 数字の向こう側まで

 見られる仕事ができるよう、

 努力したいと思っています」

 

 静かな応接室。

 

 上席は、

 ゆっくりとうなずいた。

 

「若い方が、

 そう考えておられるのは、

 心強いことです」

 

「がんばってくださいね」

 

 それは、

 役職の声ではなかった。

 若い女性事務官も、
 夏美に視線を向けて、
 微笑んだ。


 

 その夜。

 

 事務所の灯りは、

 まだ消えていなかった。

 

 モニターに表示される、

 所得税修正申告書。

 

 否認分のみの修正。

 

 数字は整っている。

 

「最終確認、もう一回や」

 

「はい」

 

 静かな確認。

 

 ヤマゲンは、

 マウスを握る。

 

 一瞬、止まる。

 

「行くで」

 

 クリック。

 

 ――送信完了。

 

 それだけだ。

 

 数字が、国へ届いた。

 

 沈黙。

 

「……終わりましたね」

 

「ああ」

 

「こういう数字はな」

 

「送ったら終わりや」


「普段の申告やったら、
 ある意味、
 送ってからがスタート、
 みたいなもんやけど」

 そのとき。

 

 携帯が震えた。

 

 ――田中。

 

「はい、大和です」

 

「田中です」

 

 落ち着いた声。

 

「先ほど、

 追徴の所得税を納めてきました」

 

「そうですか」

 

「それと……

 家内と、きちんと話をしました」

 

 短い沈黙。

 

「すべて、正直に言いました」

 

「厳しいことも、

 言われました」

 

「ですが、

 やり直すのであれば、

 今しかないと」

 

 ヤマゲンは、

 目を閉じる。

 

「先生」

 

「税金の修正よりも、

 こちらのほうが

 重いものでした」

 

「本当の修正は、

 これからです」

 

 ヤマゲンは、

 小さく笑う。

 

「遅いくらいや」

 

「ありがとうございました」


 少し、間。

 

「……先生」

 

「なんや、田中さん」

 

「このタイミングで、

 こういうことを申し上げるのは

 不謹慎かもしれませんが」

 

 息を吸う音。

 

「法人化というのは、

 どうでしょうか」

 

 ヤマゲンは、

 黙る。

 

 送信完了の文字が、
 まだ画面に残っている。

 

 夜は、

 静かだった。

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