🍀数字に心
🍀税に愛
🍀人生には笑いと熱き想いを

営業時間:10:00~19:00 定休日: 土日祝

  1. ブログ
  2. 連続税務小説 ヤマゲン
  3. 連続税務小説 ヤマゲン 第41話 「水面下」
 

連続税務小説 ヤマゲン 第41話 「水面下」

2026/02/10
連続税務小説 ヤマゲン 第41話 「水面下」

 工場の外。

 

 午後三時の空気は、

 思ったよりも静かだった。

 

 隣接する工場の、

 機械の低い唸りが

 かすかに聞こえる。

 

 この地域も、

 かつては、

 多くの工場で

 賑わっていた。

 

 今は、

 その跡地に

 マンションが立ち並ぶ。

 

 二人は並んで、

 煙草に火をつけた。

 

 白い煙が、

 ゆっくりと上に伸びていく。

 

 ヤマゲンが、

 何気ない口調で切り出す。

 

「上席はん」

 

「今の段階で」

 

「正直、

 どんなもんでっか?」

 

 上席は、

 一拍だけ置いた。

 

 煙を吐き、

 視線を前に向けたまま答える。

 

「大和先生が、

 ご関与されてからの、

 第4期と第5期は、

 正直、

 問題なさそうです」

 

 ヤマゲンは、

 小さくうなずいた。

 

「まだ全てを

 拝見した訳ではありませんが、

 帳簿も、

 処理も、

 きれいです」

 

 続けて、

 上席は言葉を選ぶ。

 

「ただ、

 第3期ですね」

 

 ヤマゲンは、

 何も言わない。

 

 分かっている、

 という顔だった。

 

「交際費」

 

「ひとりで行かれた

 クラブの飲食」

 

「それと、

 奥さんと行かれた、

 福利厚生費に計上している、

 海外旅行」

 

「この二つは……」

 

 上席は、

 はっきり言った。

 

「否認させて下さい」

 

 ヤマゲンは、

 苦笑にも似た笑みを浮かべた。

 

「そら、

 仕方ないですわ」

 

「僕も、

 同じ説明、

 もうしてます」

 

 上席は、

 ほっとしたように息を吐いた。

 

「ありがとうございます」

 

 一瞬、

 沈黙。

 

 煙草の先が、

 赤く光る。

 

「あと……」

 

 上席が、

 少し声を落とした。

 

「大和先生」

 

「実はですね」

 

 ヤマゲンは、

 視線を向けた。

 

「反面調査を

 かけたところ」

 

「田中さん、

 スクラップ売上が

 あると思うんです」

 

「しかも、

 3年とも」

 

 ヤマゲンは、

 驚いた様子を見せなかった。

 

「……でしょうな」

 

 上席が、

 わずかに目を細める。

 

「やっぱり、

 お気付きでしたか」

 

「第4期、

 第5期はですね」

 

 ヤマゲンは、

 淡々と話す。

 

「最初は、

 田中さんも

 計上してませんでした」

 

「けど、

 スクラップ業者の

 書類が出てきまして」

 

「雑収入で

 ちゃんと入れてます」

 

 上席は、

 ゆっくりとうなずいた。

 

「なるほど……」

 

「総勘定元帳の

 雑収入は、

 まだ未確認なので」

 

「後ほど、

 拝見します」

 

 そして、

 少し間を置いて聞いた。

 

「では、

 第3期の

 スクラップ売上は?」

 

 ヤマゲンは、

 正直に答えた。

 

「第3期は、

 僕が関与する前です」

 

「正直、

 計上漏れに

 なってます」

 

 上席は、

 眉を上げたが、

 すぐに続きを待った。

 

「ただし」

 

 ヤマゲンは続ける。

 

「その可能性も

 見込んで」

 

「第4期のスクラップ売上は、

 多めに

 計上してます」

 

「おそらく、

 それで

 カバーできるはずです」

 

「厳密には、

 第3期に遡って

 修正するべきですが、

 そこは『期ズレ』

 と言うことで、

 大した問題には

 ならんでしょう」

 

「消費税の面から

 言っても、

 第3期は、

 2年前の基準期間売上が1千万円未満やから、

 免税事業者。

 そやから、消費税は関係ない」

 

「さらに、

 第3期は、

 スクラップ売上を含めなくても、

 そもそも、

 売上高が1千万円を超えとりますよって、

 第5期は消費税の申告を

 させてもうてます」

 

 上席は、

 思わず笑った。

 

「……さすがですね、

 先生」

 

「では、

 うちが持ってきた

 数字と」

 

「後で、

 照合させて下さい」

 

「大きく

 ズレてなければ」

 

「それで

 良しとさせて頂きます」

 

 ヤマゲンは、

 軽く頭を下げた。

 

「助かります」

 

 しかし、

 上席は

 もう一言付け加える。

 

「ただ……」

 

 煙草を一口。

 

「今回は、

 事務官の

 研修も兼ねてます」

 

「ですので」

 

「クラブと

 海外旅行については」

 

「否認するところを、

 納税者に

 きちんと

 説明させて下さい」

 

 ヤマゲンは、

 即座に答えた。

 

「ええ」

 

「田中さんにとっても、

 勉強代ですわ」

 

 二人は、

 同時に煙草を消した。

 

 灰皿に、

 小さな音がする。

 

「ほな、

 戻りましょか」

 

「はい」

 

 再び、

 事務所のドアが開く。

 

 午後の調査は、

 これからが

 本番だった。 

 竹岡税務会計事務所 

経営が見えない!を数字でクリアに。

まずは、お気軽に無料相談を。

電話番号:090-7499-8552

営業時間:10:00~19:00

定休日 : 土日祝

所在地 : 大阪府富田林市須賀1-19-17  事務所概要はこちら

お問い合わせ