午後。
事務所は静かだった。
ヤマゲンは机で書類を見ている。
夏美はその横で、試算表を眺めていた。
田中の月次資料だった。
売上。
仕掛品。
借入。
資金繰り。
ここ最近、頭の中で何度も整理している数字だ。
ヤマゲンが言った。
「なっちゃん」
夏美は顔を上げた。
「はい」
「簿記、受けてみい」
夏美は少し驚いた。
「簿記ですか?」
「日商簿記や」
ヤマゲンは言う。
「2級」
夏美は少し考えた。
「2級……ですか」
ヤマゲンは試算表を指で叩いた。
「ここに書いてあること」
「全部、簿記や」
夏美は黙って聞いている。
ヤマゲンは続けた。
「仕掛品」
「借入」
「資金繰り」
「銀行」
一つずつ言う。
「全部」
一言。
「簿記や」
そして、少し声を落とした。
「なっちゃん」
「そろそろな」
「資産が増えた」
「負債が減った」
「収益が出た」
「費用が出た」
「そういう目で」
試算表を軽く叩く。
「商売を見る練習した方がええ」
「それが」
一言。
「複式簿記や」
夏美はゆっくりうなずいた。
その日の夜。
夏美は自宅でパソコンを開いた。
検索欄に入力する。
日商簿記検定。
画面に説明が並ぶ。
3級。
2級。
1級。
夏美は2級を開いた。
工業簿記。
材料。
製造原価。
仕掛品。
見慣れない言葉が並んでいる。
「……難しそう」
少し考えて、ページを戻る。
3級。
仕訳。
帳簿。
試算表。
こちらの方が分かりやすそうだった。
「3級の方が、いいかも」
翌日。
事務所。
夏美はヤマゲンに言った。
「先生」
「簿記、調べてみました」
「おう」
「2級って工業簿記が入るんですね」
「そや」
夏美は少し笑った。
「3級の方が簡単そうです」
ヤマゲンは顔を上げた。
「やめとき」
夏美はきょとんとする。
「え?」
ヤマゲンは椅子にもたれた。
「3級はな」
「実務的やない」
夏美は首をかしげた。
「そうなんですか?」
ヤマゲンは言う。
「全く役に立たん訳やない」
「せやけどな」
「なっちゃんには」
「逆に分かりづらい」
夏美は黙って聞いている。
ヤマゲンは続けた。
「3級は」
「教科書の世界や」
「仕訳」
「帳簿」
「試算表」
「そこまでや」
そして言う。
「でも」
「現場はちゃう」
「借入」
「資金繰り」
「仕掛品」
「銀行」
一つずつ言う。
「昨日までやっとった話や」
夏美は思わずうなずいた。
ヤマゲンは言った。
「2級はな」
「そこが出てくる」
そして、
一言。
「せやから」
「2級や」
その日の帰り。
夏美は駅前で足を止めた。
本屋の明かりがついている。
少し迷ってから、扉を押した。
店の奥に、資格試験の棚があった。
日商簿記。
3級。
2級。
夏美は手を伸ばした。
2級のテキスト。
少し厚い。
ぱらぱらとページをめくる。
材料。
製造原価。
仕掛品。
田中の工場で見てきた言葉だった。
夏美は本を閉じた。
そのまま、レジへ持っていく。
店を出ると、夜の空気が少し冷たかった。
本を抱えながら、夏美は歩き出した。
会計は、
まだ知らない言葉ばかりだ。
だが、
その言葉の向こうに、
会社の姿がある。
夏美はそれを、
少しずつ
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