夜。
夏美は机の上に本を置いた。
日商簿記2級。
昨日、本屋で買ったテキストだった。
ページを開く。
最初の章。
簿記の基本。
そして、
大きく書かれていた。
仕訳。
夏美は少し眉をひそめる。
「仕訳……」
ページをめくる。
勘定科目が並んでいる。
材料仕入高。
売上。
借入金。
左右に分かれた形。
まだ、うまく頭に入ってこない。
翌日。
事務所。
夏美はテキストを机に置いた。
「先生」
「なんや」
「仕訳って、何ですか」
ヤマゲンは少し笑った。
「そこか」
夏美はうなずく。
「最初に出てくるんですけど」
「まだ、よく分からなくて」
ヤマゲンは紙を一枚引き寄せた。
「今までな」
「売上は売上」
「借入は借入」
「別々に考えとったやろ」
夏美はうなずく。
「はい」
ヤマゲンは言った。
「でもな」
「複式簿記を勉強すると」
一言。
「商売の動きは」
「全部」
「仕訳で説明できる」
夏美は黙って聞いている。
ヤマゲンはペンを取った。
紙に書く。
材料仕入高 / 買掛金
「材料を仕入れた」
「まだ金は払っとらん」
「せやから」
「買掛金や」
夏美はうなずいた。
田中の工場の棚が頭に浮かぶ。
金属の材料。
削りかけの部品。
ヤマゲンは続けた。
普通預金 / 借入金
「銀行から金を借りた」
「これや」
さらに書く。
売掛金 / 売上高
「製品が売れた」
「せやけど」
「金はまだ入っとらん」
「だから」
「売掛金や」
ヤマゲンはペンを置いた。
「材料仕入高」
「借入金」
「売上高」
一つずつ指で示す。
「今まで」
「別々に考えとったやろ」
夏美はうなずく。
ヤマゲンは言った。
「でもな」
一言。
「全部」
「仕訳や」
紙を夏美に渡す。
「商売はな」
一言。
「仕訳で動いとる」
夏美は紙を見つめた。
左と右。
ただそれだけの形。
だが、
そこに会社の出来事が並んでいる。
売上。
借入。
材料。
昨日まで、
別々のものだと思っていた。
それが、
同じ形で書かれている。
夏美は小さくうなずいた。
「……なるほど」
ヤマゲンは笑った。
「分かってきたやろ」
その日の夜。
夏美はテキストを開いた。
仕訳のページ。
ノートを取り出す。
ゆっくり書く。
材料仕入高 / 買掛金
田中の工場の棚が頭に浮かぶ。
まだ削られていない金属。
まだ納品されていない部品。
夏美はもう一つ書いた。
売掛金 / 売上
会社の出来事は、
全部、
仕訳になる。
夏美はノートを閉じた。
会計の世界が、
少しだけ
竹岡税務会計事務所
経営が見えない!を数字でクリアに。
まずは、お気軽に無料相談を。
電話番号:090-7499-8552
営業時間:10:00~19:00
定休日 : 土日祝
所在地 : 大阪府富田林市須賀1-19-17 事務所概要はこちら