月末になると、田中 恒一の机の上は、決まって雑然とした。
加工図面。
見積書。
取引先の名刺。
そして、茶色く油染みのついたレシートの束。
「……また、ない」
田中は、小さく舌打ちした。
先週、急ぎで材料が必要になった。
いつもの商社は時間がかかる。
仕方なく、近所の金属問屋で現金払いをした。
確かに、払った。
確かに、材料はここにある。
けれど――
肝心の領収書が、見当たらない。
「どこで落としたんだ……」
作業着のポケット。
車の助手席。
ゴミ箱。
どこにもない。
会計ソフトの画面には、
「材料費 〇月〇日 〇〇円」
と入力欄が、静かに待っている。
数字は覚えている。
材料の量も、使った現場も、はっきりしている。
でも、証拠がない。
「……まあ、いいか」
田中はそう呟いて、金額を入力した。
今までも、何度もそうしてきた。
製造業は、現場がすべてだ。
段取りが遅れれば、納期に間に合わない。
領収書の管理より、目の前の仕事が優先になる。
――ちゃんと使ってるんだから。
自分に言い聞かせるように、保存ボタンを押す。
けれど、胸の奥に、わずかな引っかかりが残った。
ふと、税務署の封筒が視界に入る。
まだ、開けていない。
もし。
もし、これを見られたら。
「これ、本当に経費ですか?」
そんな声が、頭の中で響く。
田中は、加工台の横に置かれた材料を見た。
削られ、形を変え、
確かに製品の一部になっている。
現場に立つ自分からすれば、
疑いようのない“仕事のための支出”だ。
それなのに。
「……説明しろって言われたら、どうする?」
領収書がない。
請求書もない。
あるのは、田中の記憶だけだ。
その日の夕方、同業者と電話で話す機会があった。
「うちはさ、レシート無いの、結構あるよ。
まあ、バレないって」
軽い調子の声。
田中は笑って相づちを打ったが、
電話を切ったあと、笑顔は残らなかった。
――バレなければ、いい。
その言葉が、妙に重く胸に残った。
領収書がない経費。
それは「ダメ」なのか。
それとも「説明できればいい」のか。
田中には、まだ分からない。
ただ一つ、分かるのは――
「自分は、その線を説明できる自信がない」
ということだった。
机の引き出しを閉めるとき、
レシートの束が、ばらりと崩れた。
拾い集めながら、田中は思った。
税金は、
払うか、払わないか、
という話だけじゃない。
「説明できるかどうか」
それが問われる世界なのだ、と。
その夜。
田中は、初めてこんな、検索をした。
「税理士 相談 どこまで聞いていい」
画面の光が、静かに部屋を照らしていた。
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