ゴミ出しは、いつも夜だった。
工場のシャッターを下ろし、機械の電源を落とし、
最後に、作業着のポケットを探る。
その日も、同じだった。
油で黒くなったウエス。
メモの切れ端。
くしゃっと丸まったレシート。
「……いらないな」
何気なく、ゴミ袋に放り込んだ。
深く考えたわけじゃない。
ただ、いつもの癖だった。
家に戻って風呂を済ませ、
パソコンの前に座ったとき、
ふと、昼間の材料購入を思い出した。
あれ。
レシート、どこにやったっけ。
胸の奥が、すっと冷えた。
ゴミ袋は、もう玄関の外だ。
明日の朝には、回収される。
「……まさか」
田中は、慌てて靴を履き、外に出た。
街灯の下で、黒いゴミ袋を開く。
鼻をつく油の匂い。
紙くず。
弁当の空箱。
指先が、探している。
――あった。
くしゃくしゃになった、白い紙。
店名も金額も、まだ読める。
ほっとした、その瞬間。
田中は、妙な感情に包まれた。
安心よりも、虚しさだった。
「……俺、何やってるんだろうな」
領収書一枚のために、
夜道でゴミ袋を漁る。
製品を作る技術はある。
取引先からの信頼も、少しずつ積み上げてきた。
それなのに。
家に戻り、机の上にその領収書を置く。
しばらく、じっと見つめた。
これがあれば、経費になる。
なければ、ならない。
たったそれだけの紙が、
こんなにも気持ちを振り回す。
田中は、パソコンを開いた。
「レシート 捨てた 経費」
出てくるのは、
「原則として」
「基本的には」
「ケースバイケース」
どの記事も、最後は曖昧だ。
そのとき、あるブログの一文が目に止まった。
――税金は、ルールではなく“説明の世界”です。
画面を、もう一度読む。
説明。
領収書がないなら、
なぜ必要だったのか。
どこで、何を、誰のために使ったのか。
田中は、ふとノートを開いた。
そして、その材料を使った仕事の内容を、
箇条書きで書き始めた。
・急ぎの追加注文
・通常ルートでは間に合わなかった
・当日の現金払い
・〇〇社向け製品に使用
書き終えて、ペンを置く。
「……これ、最初からやってればよかったのか」
レシートを残す。
メモを残す。
理由を残す。
それは、
税務署のためだけじゃない。
未来の自分のためだと、
初めて気づいた。
机の上には、
税務署の封筒。
そして、検索履歴。
「税理士 相談 製造業」
田中は、画面を見つめたまま、
小さく息を吐いた。
まだ、誰にも会っていない。
まだ、何も始まっていない。
けれど。
「一人で抱えるには、限界がある」
そんな感覚だけが、
確かに、芽生えていた。
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