契約を交わしてから、
初めての打ち合わせだった。
事務所のドアを開けた瞬間、
田中 恒一は、
ほんの一瞬、違和感を覚えた。
机の上に、
赤い箱が置いてある。
やけに、目立つ。
――イチゴポッキー。
「……それ」
思わず、口から出た。
「気になります?」
ヤマゲンは、
悪びれもせず、箱を手に取った。
「イチゴポッキーですわ」
田中は、
一瞬、言葉に詰まった。
税理士事務所。
顧問契約後、初回の打ち合わせ。
机の上の、イチゴ。
そして、
もう一つ。
視線を上げた瞬間、
田中は気づいた。
――ネクタイ。
よく見ないと分からない。
でも確かに、
小さなイチゴ柄。
「……あの」
田中は、
少し言いづらそうに言った。
「ネクタイも、
イチゴですよね?」
ヤマゲンは、
一瞬だけ間を置いてから、
にやっと笑った。
「よう気づきましたね」
ネクタイを、
指で軽くつまむ。
「これな、
わざとです」
「……わざと?」
「はい」
即答だった。
「税理士事務所ってな」
ヤマゲンは、
椅子に腰かけながら言う。
「入った瞬間、
肩に力入りすぎるんです」
「せやから」
イチゴポッキーの箱と、
ネクタイを、
交互に指す。
「最初に一個、
違和感置いとく」
田中は、
思わず笑いそうになるのを、
こらえた。
「お客さん側からしたら」
ヤマゲンは続ける。
「『イチゴ好きなん?』
『センスないん?』
どっちか思うでしょ」
「……正直、
思いました」
「でしょ」
満足そうにうなずく。
「その瞬間な」
声のトーンが、
少し落ちる。
「税理士=怖い
が、一段落ちるんです」
ヤマゲンは、
イチゴポッキーを一本取り、
田中の前に差し出した。
「どうぞ」
「……いただきます」
甘い。
思っていたより、
ずっと甘い。
そして、
肩の力が抜けた。
「ここからな」
ヤマゲンは、
ポッキーを机に置いた。
空気が、
はっきり変わる。
「契約した以上」
資料を開く。
「本音で行きます」
「遠慮、
いりません」
「数字、
全部出してもらいます」
売上。
原価。
人件費。
「“だいたい”は、
禁止です」
田中は、
小さく息をのんだ。
でも、
嫌な感じはしなかった。
「安心してください」
ヤマゲンは、
ネクタイのイチゴを
軽く叩く。
「緩めるところは緩める。
締めるところは締める」
「その切り替えのための
イチゴですわ」
田中は、
赤い箱とネクタイを見た。
さっきまで感じていた
違和感。
それが、
安心感に変わっている。
「ヤマゲンさん」
そう呼ぶと、
ヤマゲンは満足そうにうなずいた。
「ええですね」
「ほな、改めて」
資料を閉じる。
「顧問税理士・
大和源太郎として、
本気で行きます」
田中は、
もう一度、
イチゴポッキーをかじった。
甘い。
でも、
この先の話は、
きっと甘くない。
それが、
なぜかはっきり分かった。
竹岡税務会計事務所
経営が見えない!を数字でクリアに。
まずは、お気軽に無料相談を。
電話番号:090-7499-8552
営業時間:10:00~19:00
定休日 : 土日祝
所在地 : 大阪府富田林市須賀1-19-17 事務所概要はこちら