数日後。
夏美は田中の工場に来ていた。
旋盤の音が響いている。
油の匂いが少し強い。
田中は機械を止め、手袋を外した。
「夏美先生」
「こんにちは」
田中は工場の奥を指さした。
「ちょっと見てもらえますか」
二人は棚の前に立った。
箱がいくつも並んでいる。
中には、途中まで削られた金属の部品が入っていた。
「これ」
田中が言う。
「まだ完成してない部品です」
夏美はうなずいた。
「在庫、つまり、仕掛品ですね」
「ええ」
田中は腕を組んだ。
「材料は買っています」
「私が削っています」
「機械も回しています」
一拍。
「だから、経費ですよね?」
夏美は一瞬、言葉を失った。
「え……」
田中は続ける。
「材料代も払っています」
「加工もしています」
「電気も使っています」
「だから経費ですよね?」
夏美は棚の部品を見た。
削りかけの金属。
まだ製品ではない。
「その……」
言葉を探す。
「まだ完成していないので……」
説明がうまくまとまらない。
そのときだった。
入口の引き戸が開く音がした。
「納品できるんか?」
ヤマゲンだった。
「先生」
夏美が振り向く。
ヤマゲンは棚の部品を一つ手に取った。
「これ」
「今すぐ納品できるんか?」
田中は首を振る。
「まだです」
「まだ加工途中です」
「そやろ」
ヤマゲンは言う。
「まだ納品できてへん」
一拍。
「つまり」
「まだ売れてへん」
夏美は小さくうなずいた。
ヤマゲンは部品を棚に戻した。
「売れてへんもんは」
一言。
「経費にならん」
田中は黙って聞いている。
ヤマゲンは続けた。
「売上が立って」
一拍。
「初めて原価になる」
静かな声だった。
「せやから」
一言。
「資産や」
夏美は棚の部品を見た。
ヤマゲンは続ける。
「現金が」
一拍。
「姿を変えた資産や」
そして、静かに言った。
「せやけどな」
一拍。
「材料を買うたとき」
「現金は減っとる」
夏美は顔を上げた。
ヤマゲンは棚を指した。
「まだ売れてへんから、経費にはならんけど」
「金だけは出ていっとる」
田中はゆっくりうなずいた。
「なるほど」
棚を見ながら言う。
「利益には出てこないのに」
「お金だけは減っているわけですね」
ヤマゲンは小さく笑った。
「そういうことや」
一拍。
「黒字やのに」
「金がない」
工場を出る前、
夏美はもう一度棚を見た。
削りかけの金属。
まだ完成していない部品。
そこには、
材料代も、
田中の手間も、
機械を回した時間も、
全部詰まっている。
現金は、
消えたわけではない。
ただ、
姿を変えただけだ。
だが、
その姿になった瞬間、
通帳の残高は減る。
そのことを、
夏美はまた一つ、
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