🍀数字に心
🍀税に愛
🍀人生には笑いと熱き想いを

営業時間:10:00~19:00 定休日: 土日祝

  1. ブログ
  2. 連続税務小説 ヤマゲン
  3. 連続税務小説 ヤマゲン 第60話 「在庫とカネ」
 

連続税務小説 ヤマゲン 第60話 「在庫とカネ」

2026/03/01
連続税務小説 ヤマゲン 第60話 「在庫とカネ」

 数日後。

 

 夏美は田中の工場に来ていた。

 

 旋盤の音が響いている。

 油の匂いが少し強い。

 

 田中は機械を止め、手袋を外した。

 

「夏美先生」

 

「こんにちは」

 

 田中は工場の奥を指さした。

 

「ちょっと見てもらえますか」

 

 二人は棚の前に立った。

 

 箱がいくつも並んでいる。

 

 中には、途中まで削られた金属の部品が入っていた。

 

「これ」

 

 田中が言う。

 

「まだ完成してない部品です」

 

 夏美はうなずいた。

 

「在庫、つまり、仕掛品ですね」

 

「ええ」

 

 田中は腕を組んだ。

 

「材料は買っています」

 

「私が削っています」

 

「機械も回しています」

 

 一拍。

 

「だから、経費ですよね?」

 

 夏美は一瞬、言葉を失った。

 

「え……」

 

 田中は続ける。

 

「材料代も払っています」

 

「加工もしています」

 

「電気も使っています」

 

「だから経費ですよね?」

 

 夏美は棚の部品を見た。

 

 削りかけの金属。

 

 まだ製品ではない。

 

「その……」

 

 言葉を探す。

 

「まだ完成していないので……」

 

 説明がうまくまとまらない。

 

 そのときだった。

 

 入口の引き戸が開く音がした。

 

「納品できるんか?」

 

 ヤマゲンだった。

 

「先生」

 

 夏美が振り向く。

 

 ヤマゲンは棚の部品を一つ手に取った。

 

「これ」

 

「今すぐ納品できるんか?」

 

 田中は首を振る。

 

「まだです」

 

「まだ加工途中です」

 

「そやろ」

 

 ヤマゲンは言う。

 

「まだ納品できてへん」

 

 一拍。

 

「つまり」

 

「まだ売れてへん」

 

 夏美は小さくうなずいた。

 

 ヤマゲンは部品を棚に戻した。

 

「売れてへんもんは」

 

 一言。

 

「経費にならん」

 

 田中は黙って聞いている。

 

 ヤマゲンは続けた。

 

「売上が立って」

 

 一拍。

 

「初めて原価になる」

 

 静かな声だった。

 

「せやから」

 

 一言。

 

「資産や」

 

 夏美は棚の部品を見た。

 

 ヤマゲンは続ける。

 

「現金が」

 

 一拍。

 

「姿を変えた資産や」

 

 そして、静かに言った。

 

「せやけどな」

 

 一拍。

 

「材料を買うたとき」

 

「現金は減っとる」

 

 夏美は顔を上げた。

 

 ヤマゲンは棚を指した。

 

「まだ売れてへんから、経費にはならんけど」


「金だけは出ていっとる」

 

 田中はゆっくりうなずいた。

 

「なるほど」

 

 棚を見ながら言う。

 

「利益には出てこないのに」

 

「お金だけは減っているわけですね」

 

 ヤマゲンは小さく笑った。

 

「そういうことや」

 

 一拍。

 

「黒字やのに」

 

「金がない」




 工場を出る前、

 

 夏美はもう一度棚を見た。

 

 削りかけの金属。

 

 まだ完成していない部品。

 

 そこには、

 

 材料代も、

 

 田中の手間も、

 

 機械を回した時間も、

 

 全部詰まっている。

 

 現金は、

 

 消えたわけではない。

 

 ただ、

 

 姿を変えただけだ。

 

 だが、

 

 その姿になった瞬間、

 

 通帳の残高は減る。

 

 そのことを、

 

 夏美はまた一つ、


 理解し始めていた。

 竹岡税務会計事務所 

経営が見えない!を数字でクリアに。

まずは、お気軽に無料相談を。

電話番号:090-7499-8552

営業時間:10:00~19:00

定休日 : 土日祝

所在地 : 大阪府富田林市須賀1-19-17  事務所概要はこちら

お問い合わせ